普段生活している中で毎日ではないですが、例えばお金の額が大きい買い物としては家や自動車の購入、身近な場合としては携帯電話の新規購入・機種変更や転勤などでの引越しの際に多くの方が何かしらの「契約書」を取り交わした経験があると思います。
その際にお店の担当者から”こちらの書類へご署名をお願いします”や”この契約書へ署名又は記名押印ください”ということでサインやはんこを押したと思います。
これら契約書などを作成する際の「署名」と「記名押印」の違いはあるのでしょうか?
もしあるならば何が違うのでしょうか?
また「押印」と「捺印」では何か違うのでしょうか?
という疑問が出てくるのではないでしょうか。
署名と記名について
契約書などを締結する場合は契約を結ぶお互いの氏名(・住所)を書面としてそれぞれ保管しておくことが一般的ですが、契約の当事者が自分の名前を記す方法として「署名」と「記名」があります。
署名
まず「署名」とは、”本人の氏名を自筆で手書き(自書/サイン)”することです。自筆でサインすることにより本人が確実に契約等を行った証拠として、この証拠能力は極めて高くなります。
記名
次に「記名」とは、”署名以外の方法で本人の氏名を記入・入力”することです。この”記名”の例としては、契約書等へワープロソフトで氏名を入力したものを印刷することや法人などであればゴム印を押したものをさします。自筆でサインを行う”署名”とは異なり、この契約書等に対し本人が本当にその意思を持って行ったかどうかは”記名”だけでは真意が分からないため証拠能力としては低くなります。
このため「記名」の場合には、「印鑑での押印(捺印)」を併せて行うことにより以下の法律により「署名」と同等の証拠能力があるものとされています。
参考:商法 第32条(抜粋)
この法律の規定により署名すべき場合には、記名押印をもって、署名に代えることができる。
つまり、「署名」=「記名押印」ということになります。
なお契約を行う場合は「署名又は記名押印」で証拠能力として有効のため、”署名”していれば「捺印」がなくとも有効です。
(身近な例として、家電量販店で携帯電話をなんとなく見ていたら本日お安いですよってことで、印鑑を持っていなくても契約できてしまったなどでしょうか)
ただし”署名”の場合でも捺印する必要がなくても、実務上は契約書など作成する場合は印鑑で同時に捺印を行うことが一般的です。これは契約を行う上で、本人(法人)の意思確認が求められるため捺印も併せて行っています。
押印と捺印について
結論から言えば、「押印」=「捺印」となります。
どちらも印鑑でハンを押すことを意味しており基本的に同じですが、一般的な言葉の使われ方として”署名”には「捺印」、”記名”では「押印」と呼ばれており「署名捺印、記名押印」という形で使用されています。
なお、法律上では「押印」が使われています。
まとめ
一般的に日々暮らしている中で契約などを行う機会があまりない方にとっては混乱しがちな言葉かもしれません。確実に言えることは”署名+捺印”することがまちがいないということでしょうか。従って上記内容を箇条書きにまとめると以下のようになります。
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「署名」は”本人が氏名を自筆で手書き”すること。
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「記名」は”署名以外の方法で本人の氏名を記入”しておくこと(例:ワープロソフトやゴム印での氏名入力etc)
⇒記名の場合は、押印とセットで使用=記名押印(=署名と同等の証拠能力)
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「押印」と「捺印」は基本的に同じ意味
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法的な証拠能力の高さ(小さい番号の方が高い)
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署名捺印: 署名のみでも有効であるが、捺印も併せて行っているため最も証拠能力が高い
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署名のみ: 契約は有効
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記名押印: 契約は有効
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記名のみ: 正式な効力としては認められない
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